機関誌ぷらいむ

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No.21

(現場レポート)就業・就職につながる講習で高齢者の能力を引き出す「パソコンを活用した会計・簿記講習」
分かりにくいところは講師が一人ひとり教えていく
分かりにくいところは講師が一人ひとり教えていく
受講者は「技能を身につけ就業につなげたい」と、熱心に聞き入る
 団塊の世代が高齢者の仲間入りをする2007年。以後、ホワイトカラー層が増える中、企業のニーズに即した人材を育てるためのプログラムが問われている。1月に実施した講習を振り返りその方向性を探ってみた。
受講者は「技能を身につけ就業につなげたい」と、熱心に聞き入る

 1月11日から18日の6日間、島根県シルバー人材センター連合会では企業側のニーズに即し、高齢者の就業・就職に照準を合わせた「パソコンを活用した簿記・会計講習」を開催した。最終日となる18日には松江ハローワーク・島根県経営者協会の協力、連合会主催で「合同面接会」の実施で受講者と企業側のマッチングも行った。
 従来のパソコン初級講座では、Word・Excelの入力といった入門編のみ。就業・就職にはつながりにくいというのが本音の部分であった。そこで、今回は実務的な講習として「会計・簿記」に特化。受講者レベルもWord・Excelの文字入力及びマウス操作ができ、経理経験者や簿記の基本、貸借対照表と損益計算書の役割を理解している希望者から優先的に選考した。告知用のチラシに就職意欲、パソコン技能、経理経験に関するチェック表を掲載し、HPや携帯サイトでの申込みという条件も加えて受講者のレベルを絞り込んだ。
 こうして集まった15名は一様に熱心で、休み時間を惜しんでは質問し、家庭での復習も欠かさないという声も聞かれた。「求職活動中だが、年齢のハードルは高い。自分の努力が試されている時だからこそ、技能を磨き、就職につなげたい」多くの受講者が厳しい現状を肌で感じているからこそ、専門性を身につけようと真剣なのだ。
 最終日の「合同面接会」は受講者14名、企業三社が出席。参加企業はいずれも連合会が実施したアンケートで高齢者雇用に関心があると回答した企業。パソコン技能と会計・簿記の知識、経験を兼ね備えた人材との面接が可能ということから参加を決めたという。結果、二社が第二次面接を実施した。
 今回の講習と合同面接会を参考に、実務的、専門的なカリキュラムの設定、時間数の増加などを検討し、より充実した講習の実施が今後も望まれるところである。


No.20
(現場レポート)環境保全 就業を通じての取り組み
次から次へとベルトコンベアの上を流れてくる資源ゴミの中から異物を取り除いていく。作業精度はとても高いという
次から次へとベルトコンベアの上を流れてくる資源ゴミの中から異物を取り除いていく。作業精度はとても高いという
ひとつひとつチェックしながら収集していく高木さん
 現在、地方自治体では環境保全に向けた様々な取組が行われている。中でもゴミ問題対策は避けては通ることのできない問題であり、今後のシルバー人材センターの就業分野としても期待が高い。 
 地方自治体が行う環境保全に向けた様々な取組にいかに関わるか、今後の指針を求めて二つの事例を訪ねてみた。
ひとつひとつチェックしながら収集していく高木さん

 宍道町では町内に設けたリサイクルボックスの資源ごみの収集業務をしんじシルバー人材活用センター会員が行っている。平日は隔日で四カ所、毎週土日は五カ所から収集、すべてのごみをチェックして混入物を取り除いた後にリサイクルセンターへ搬入する。会員の高木清さんは「当初は汚い仕事だと正直思ったが今は違う。仕事を通じて環境問題に関心が生まれ、リサイクルセンターの仕事を見て責任感が増した。私の担当はどこもきれいにしたい」とやる気をみせる。
 松江市の川向リサイクルプラザ「くりんぴーす」では、松江市シルバー人材センター会員が資源ごみから異物を取り除く作業を行っている。一日に取り扱う資源ごみ量は「その他紙類」が三〜四トン、「その他プラスチック類」が七〜八トン。資源ごみは機械でプレスされて指定業者に有料で引き取られる。つまり会員の手を経てごみが商品化されていくというわけだ。プラスチック類は指定業者の査定で二年連続Aランクと高い評価を受けた。班長の門脇勉さんは心のゆるみが事故や品質の劣化につながると檄を飛ばすこともあるが、チームワークを重視。共働・共助の精神で互いに声をかけ合う。
 同プラザを管理する松江市広域再生資源共同組合の総括責任者伊藤真也さんは個々の能力の高さと責任感、チームワークの良さを高く評価、今後の活躍に期待を寄せる。
 いずれのケースも環境保全の仕事に従事する会員の責任感は強く、仕事に対する周囲の評価も高い。しかし、同分野への就業希望者は多いとはいえないのが現状ではないだろうか。今後、同分野の仕事を受託していくためにも、会員の仕事や環境に対する意識啓発、同分野での就業を希望する会員を確保し、育成するための方策が必須であろう。


No.19
(現場レポート)地域に密着した子育て支援の担い手に
元気に遊ぶ子ども達。元気な分、安全に気を遣うことになる
元気に遊ぶ子ども達。元気な分、安全に気を遣うことになる
子ども達は「先生が好き」と口をそろえる
 今後、我が国の社会経済全体に深刻な影響を与えるであろう少子化問題。この流れを変えるため、様々な対策が講じられている。その柱の一つに地域における子育て支援サービスの推進があり、シルバー人材センターの役割も重要視されている。今後、女性の就労確保など新たな可能性を導き出すであろう子育て支援事業。その現場を訪ねてみた。
子ども達は「先生が好き」と口をそろえる

 江津市の渡津地区子育て支援グループが運営する「わたづにこにこクラブ」では、現在江津市シルバー人材センターの五名の会員がシフト制で学童保育に従事する。
 同クラブから直接依頼を受け、主任指導員を務める高村幸子先生(たかむらさちこ)は「会員の皆さんとは意思の疎通がとりやすく、子どもへの指導方針が徹底しやすい。また、皆さんの気配りが良く、子どもの興味をうまく引き出していらっしゃいますね」と語る。時に優しく、時に厳しく接する会員に子どもたちも信頼を寄せているという。
 「子育て支援は単なる子育ての延長ではなく、責任を持って子どもの安全や命を守り、成長や心を見守ることが重要」と語る会員の大場貞女さん(おおばさだめ)の言葉の端々には緊張感がのぞき、責任ある仕事の一端が垣間見える。それ故に、安全管理や現場での対応を学ぶための事前研修や講習会の実施、メンタル面でのフォローを望む声が実に多いのも確かだ。
 そうした要望を取り入れている例として松江市シルバー人材センターの福祉家事援助・育児サービス班がある。同班では保育園の園長先生による研修会の実施、松江市子育て支援センターが開催する講座などの情報提供に加え、独自で研修会のカリキュラムも構想中だ。
 研修や講習会の実施は会員の仕事への自信と意欲を増進、きめ細かなサービスを生み出す結果を生み出している。会員の心配りと自宅での子守が簡単に頼めるシステムの両面が利用者に好評で、その評判は口コミで広がっている。
 社会環境が激変する中、育児支援への社会的要請は想像以上に高い。その声に的確に応えるためにバックアップ体制を整えることが急務であり、そうすることが会員一人ひとりの可能性を高め、顧客拡大へ向けた新たな道標となるのではないだろうか


No.18
(現場レポート)プログラムへの高まる期待感と可能性高まる期待感と可能性
にこやかに接客する板倉吉子さん
にこやかに接客する板倉吉子さん。仕事にも自信が持てるようになったという
永瀬常務理事
永田さん
「顧客満足度を高めることが目標」という永瀬常務理事
顧客ニーズに合わせることが必要、と語る永田さん

 高齢者の雇用や就業機会の確保をいかに促進させるのか。その方策の一つに、シルバー人材センターが厚生労働省の委託を受けて実施する「シニアワークプログラム」事業がある。これは、六十歳台前半層を中心とした高齢求職者等を対象に、地域の事業主団体等の参画・協力のもと、雇用を前提とした技能講習や合同面接会を行うものだ。
 三月十一日、十二日、大社町シルバー人材センターで、会員の接遇力向上を目的に講習が実施された。その内容は挨拶や言葉づかいなどの基本マナーから、電話対応まで幅広く、参加者は定員枠を超え、関心の高さを示した。常務理事永瀬州男さんは「すべての仕事の基本である接遇力を向上させ、顧客満足度の高い人材を育てたい」と研修意図を明確にする。
 実際に効果は現れたのだろうか?多くの会員が販売、配膳、配食に従事する「観光センターいずも」(大社町)代表取締役専務永田勝人さんは「センターさんが接客接遇の講習を実施されたと知り、ありがたいと思った。当店でも挨拶を徹底したところだったので、相乗効果で会員さんの挨拶が良くなった。このように、職場に適する研修をしていただくと安心だ。今後も研修で外の風を入れ、会員さんの長所を引き出していただきたい」と語って下さった。
 一方、研修を受け、同店で販売に従事する板倉吉子さんは「今回の講習会で基本を見直し、仕事でも実践を心掛けている。これからも勉強をしていきたい」と意欲をみせる。
 このように、目的を定めて実施された研修は会員の意識を向上させ、顧客満足度を高める。しかし、永田さんから次のようなご指摘もいただいた。「会員さんの能力に個人差があり不安な面もある。ぜひ、研修でセンター全体のレベルの均一化を図っていただきたい。また、仕事に従事する心構えなど理念教育、業種にあわせた内容もお願いしたい」。
 このように、顧客からは現場のニーズに合わせた対応が求められている。おそらく、このような観光業界以外でも、まだ数多くの顧客ニーズが埋もれており、まずそれを探すことが顧客満足の第一歩ではないだろうか。


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