山陰の小京都といわれる津和野町は大らかな自然に包まれた城下町。旅の始点はJR津和野駅。蒸気機関車の運行日には懐かしい汽笛が響くことも。
まずは白壁と格子窓が残る武家屋敷や老舗商店、掘割で群れ遊ぶ鯉、カトリック教会をのぞきながら弥栄神社へ。ここは津和野城の鎮護のために城の鬼門にあたる地に建てられたという。
旅の安全祈願後は、春の日差しに耀く津和野川にかかる御幸橋を渡ろう。その先一帯は津和野藩御殿跡で、築地基壇と大井戸が遺存する。南側には津和野藩主亀井氏が造った庭園「嘉楽園」があり、唯一の遺構「旧津和野藩邸馬場先櫓」が残る。また、四月中旬、園内はあでやかな八重桜が咲き誇る。
次の目的地、津和野城跡へは津和野高校を右折して坂を上り、リフトに乗って山頂へ。城は鎌倉時代に鎌倉の御家人吉見頼行が元冦警備のために築いたもので現在は出丸、本丸の石垣が昔のままに残り、眼下に石州瓦の美しい町並みが望める。
城山の南西山ろくには城の守護神鷲原八幡宮があるので、中国自然歩道をゆっくり下り、木々の息吹に身をゆだねながら森林浴を楽しみたい。八幡宮の社前の広大な広場は鶴岡八幡宮の馬場を模し、全国でも唯一原形を残す流鏑馬馬場。毎年四月第二日曜日(今年は四月十日)には「流鏑馬神事」が執り行われる。この勇壮な神事を幕開けに、津和野の町も山も、そして散歩道も本格的な春の装いに彩られていく。 |